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. 2021 May 13;32(5):254–262. doi: 10.1002/jja2.12603

COVID–19の第1波への対応についてのJAAM全国調査(JAAM nationwide survey on the response to the first wave of COVID–19 in Japan)

~第2部:医療機関はどのように乗り越えたのか,今後どう備えるべきか~(–Part II: How did medical institutions overcome the first wave and how should they prepare for the future? –)

織田 順 (Jun Oda) 1,2,, 六車 崇 (Takashi Muguruma) 1,3, 松山 重成 (Shigenari Matsuyama) 1,4, 田邉 晴山 (Seizan Tanabe) 1,5, 西村 哲郎 (Tetsuro Nishimura) 1,6, 菅原 洋子 (Yoko Sugawara) 1,7, 小倉 真治 (Shinji Ogura) 1,8
PMCID: PMC8207129

ABSTRACT

Aim: To investigate and clarify the surge capacity of staff/equipment/space, and patient outcome in the first wave of coronavirus disease (COVID–19) in Japan.

Methods: We analyzed questionnaire data from the end of May 2020 from 180 hospitals (total of 102,578 beds) with acute medical centers.

Results: A total of 4,938 hospitalized patients with COVID–19 were confirmed. Of 1,100 severe COVID–19 inpatients, 112 remained hospitalized and 138 died. There were 4,852 patients presumed to be severe COVID–19 patients who were confirmed later to be not infected. Twenty–seven hospitals (15% of 180 hospitals) converted their intensive care unit (ICU) to a unit for COVID–19 patients only, and 107 (59%) had to manage both severe COVID–19 patients and others in the same ICU. Restriction of ICU admission occurred in one of the former 27 hospitals and 21 of the latter 107 hospitals. Shortage of N95 masks was the most serious concern regarding personal protective equipment. As for issues that raised ICU bed occupancy, difficulty undertaking or progressing rehabilitation for severe patients (42%), and the improved patients (28%), long–lasting severely ill patients (36%), and unclear isolation criteria (34%) were mentioned. Many acute medicine physicians assisted regional governmental agencies, functioning as advisors and volunteer coordinators.

Conclusion: The mortality rate of COVID–19 in this study was 4.1% of all hospitalized patients and 12.5% (one in eight) severe patients. The hospitals with dedicated COVID–19 ICUs accepted more patients with severe COVID–19 and had lower ICU admission restrictions, which could be helpful as a strategy in the next pandemic.

Keywords: SARS-CoV-2, medical staff, survey, acute medicine

背景と目的

世界保健機関(WHO)は,2020年3月10日に新型コロナウイルス感染症(COVID–19)がパンデミックに至っていると宣言した 1)。本邦では3月末にCOVID–19感染数が増加しはじめ 2),4月中旬には新規感染者数が600名/日に達した。2020年5月末には新規感染数は一旦減少した。上記の期間中,本邦のすべての医療者がCOVID–19患者に対して積極的に診療に関わり,なかでも,とくに救急医,集中治療医,感染症科医,呼吸器内科医は中心的に活躍した。日本救急医学会(JAAM)認定の救急科専門医指定施設を対象に実施した全国調査から,COVID–19患者に対する体制強化策を検討した。

本研究では重症度ごとの患者転帰を記述し,COVID–19第1波後の医療のあり方について考察した。上述の調査データを分析した。これらは適切な匿名化を行ったうえで日本救急医学会理事会の承認を得て実施した。

なお,本論文はAcute Medicine & Surgery誌にoriginal article “JAAM Nationwide Survey on the response to the first wave of COVID–19 in Japan. Part II: How was the treatment and how to prepare in future?” として掲載された論文(https://doi.org/10.1002/ams2.592)のsecondary publicationである。

方  法

調査対象医療機関と回答期間

日本救急医学会(JAAM)は,約11,000名の会員を有する救急医療に関する学術団体である。救急科専門医制度を有し,救急医療の実績が十分にあり,救急科専門医の育成に適した急性期医療機関を救急科専門医指定施設として認定している。JAAMが認定した513の救急科専門医指定施設に対して,2020年5月31日時点での状況をもとに調査を行った。回答期間は2020年6月8日から27日までとした。

調査票・様式

調査はGoogleフォームを用いて構築し,各施設はウェブサイト経由で回答した。各施設における改善案についての質問以外は必須項目とした。

(1). 施設の詳細

所在地,病床数,施設区分,救急医療体制,重症患者の入院料種別,救急専従医の数

(2). COVID–19に対する病院診療体制

担当部署,院内ガイドラインの策定,事業継続計画(BCP),感染対策チーム・体制,発熱・渡航者外来の管理,COVID–19病棟の重症度,主治医の専門性,病床管理,COVID–19患者用の病床数,診療が制限された状況,機能

(3). 初期診療体制

救急外来での感染防御,PCR検査・抗原検査能力,COVID–19ウイルス感染が疑われる患者の治療,感染が疑われる患者の数,COVID–19診療において救急医のアドバンテージと考えられること

(4). 医療資機材

個人保護具や医療機器の需給

(5). 医療従事者の過労とそのケア体制

院内のストレスチェックシステムとメンタルヘルスケア,ストレスの原因,残業,部署間の勤務シフト・支援体制の管理,第1波を乗り切れた要因,都道府県や地域医療管理体制への貢献

(6). COVID–19患者の転帰

重症度別入院患者数,退院,転院,入院中,増悪,死亡の例数

定義と分析

COVID–19患者の重症度については,酸素投与が必要な患者を中等症患者,人工呼吸器,体外式膜型人工肺(ECMO),集中治療室(ICU)での管理が必要な患者を重症患者と定義した。COVID–19入院患者のいる医療機関の予定手術/ICU入院/救急患者の受け入れ制限の状況を評価するために,COVID–19専用ICUを持つ医療機関(n=27)と,COVID–19患者とCOVID–19患者以外の患者を同一ユニット内に入院させざるを得なかった医療機関(n=107)とを比較した。両群をカイ二乗検定で比較した。

結  果

COVID–19入院患者の転帰

COVID–19の入院患者として合計4,938例が確認された。その転帰をFig. 1に示す。中等症までの患者3,838例のうち,62例が死亡,259例が重症化し,392例が入院中であった。1,100例の重症患者のうち138例が死亡し,112例が入院中であった。加えて4,852例が,COVID–19に罹患して重症化した可能性があった擬似症例であった。1,845例が救急ICUに入院し,615例が外科ICUまたは混合ICUに入院した(データ提示なし)。

Figure 1.

Figure 1

Outcomes of COVID–19 patients in 180 Japanese hospitals as at 31 May, 2020. Data are shown as n (%).

COVID–19重症患者の入院のためのICU運用

重症COVID–19患者のために,27病院(15%)がICUをCOVID–19患者専用のユニットに転換,107病院(59%)でICUの一部をCOVID–19患者用として運用し,多くの医療機関で3人以上の重症例を入院加療していた(Fig. 2a)。COVID–19専用ICUを準備した27施設では,1,100人の重症COVID–19患者のうち353人(32%)の治療を担当した。一部の医療機関では,ICU・HCU・旧病棟などを専門のケアユニットに再編成や,臨時ユニットの設置を行っていた。Fig. 2bに,各種ICUで入室を制限した医療機関の数を示す。ICU入室の制限は,COVID–19患者と非COVID–19患者を同じユニットに入室させている医療機関よりも,COVID–19専用ICUがある医療機関で有意に少なかった(1/27 vs. 21/107, p<0.05)。予定手術の制限(データ提示なし),または救急患者の受け入れ(Fig. 2c)には差を認めなかった。

Figure 2.

Figure 2

Types of intensive care unit (ICU) management for severe COVID–19 patients in Japan and (a) number of hospitalized severe COVID–19 patients, (b) restriction of ICU admission, and (c) restriction of acceptance of emergency patients. HCU: high care unit

重症なCOVID–19患者の大多数は救急ICUに入室し,次いで混合ICUと外科ICUに入室していた。非COVID–19患者のICU入室制限は,調査期間中の重症入室患者数にかかわらず予定手術の制限(Fig. 3 ),救急患者の制限(Fig. 3 )とも半数以上の医療機関で発生していた。逆に17%の医療機関は,労務負荷が増大したにもかかわらず救急患者の受け入れを継続した。Fig. 4に示すように,169(94%)の医療機関が重症COVID–19患者のためにICUベッドを準備していた。77施設ではICUベッドを準備したにもかかわらず,予定手術または非COVID–19患者のICU入室制限を要していた。

Figure 3.

Figure 3

Restriction of intensive care unit (ICU) admission, elective surgery of non–COVID–19 patients, and limited acceptance of emergency patients in Japanese hospitals during the first wave of COVID–19 in Japan. Filled bars, hospitals with three or more severe patients (n=57, total); open bars, other hospitals (n=123, total).

Figure 4.

Figure 4

Number of intensive care unit beds prepared for severe COVID–19 patients in 169 Japanese hospitals during the first wave of COVID–19. Filled columns, hospitals that restricted intensive care unit admission or elective surgery of non–COVID–19 patients.

医療資機材や機器の不足

Fig. 5aに個人防護具の充足度を防護具を交換した日数で示した。患者ごとに個人防護具を交換することができた医療機関は限定的であった。N95マスクの不足が最も顕著であり,医療スタッフは49施設(27%)で1日中,101施設(56%)で2日以上同じN95マスクを使用しつづける必要があった。サージカルマスク,フェイスシールド,アイシールドの不足も発生していた。55の感染症指定医療機関に限っても,個人防御具は指定医療機関と同様に不足していた(Fig. 5b)。上記の医療資機材以外では,多くの医療機関でプラスチックガウン(112施設,62%),外科用ガウン(74施設,41%),ゴーグル(72施設,50%),アルコールベースの手指消毒剤(65施設,36%)が不足していた。これは5人以上の中等症または1人以上の重症COVID–19患者の入院を受け入れた施設でも,それ以外の施設でも発生していた(Fig. 6)。さらに,N95やサージカルマスクなどの個人防護具の品質を懸念している施設や,ビデオ喉頭鏡用のバッテリーが不足していた施設もあった。

Figure 5.

Figure 5

Personal protective equipment sufficiency during the first wave of COVID–19 in (a) 180 Japanese hospitals and (b) 55 medical institutions designated for specified infectious diseases.

Figure 6.

Figure 6

Shortage of medical equipment other than N95/surgical masks and face/eye shields during the first wave of COVID–19 in Japan. Filled bars, hospitals with five or more mild to moderate patients or one or more severe patient (n=130, total); open bars, other hospitals (n=50, total).

COVID–19患者の入院診療の困難性

Fig. 7に,COVID–19患者の入院中診療で遭遇した課題を示した。重症患者(42%)および回復期の患者(28%)へのリハビリテーションの導入や進行の困難性が挙げられた。重症患者の長い経過(36%)と不明確な隔離基準(34%)もICU病床の占拠をもたらしていた。

Figure 7.

Figure 7

Difficulties in managing hospitalized severe COVID–19 patients during the first wave of COVID–19 in Japan. ICU: intensive care unit

救急部門における今後の感染防御

救急医が高度な個人防護具(PPE)を着用した救急患者のタイプと,COVID–19の罹患が不明な患者に対して高度なPPEを継続して使用する期間を尋ねた(Fig. 8)。

Figure 8.

Figure 8

Types of emergency patients whose medical care requires the use of advanced personal protective equipment (PPE) during initial treatment, now and in the future. NPPV: non–invasive positive pressure ventilation

85施設では,救急医は病歴と症状に基づいてCOVID–19罹患が疑われる症例でのみ高度なPPEを着用すると答えた。一方,他の95施設では,すべての救急患者およびエアロゾル感染の可能性があるすべての患者に対し高度なPPEを使用すると答えた。これらの95施設に対し,PPE装着の必要性について今後の対応を問い合わせたところ,「COVID–19ワクチン接種が行われるまで継続する必要がある」が35施設(35%),「COVID–19の治療法が一般的になるまで使用を続けるべきである」が16施設(17%),「人口の大部分が抗体を持つまで使用を続ける必要がある」が16施設(17%),「今後すべての患者に高度なPPEが必要」が14施設(15%)であった。

考  察

大変な努力の末,日本国民はクルーズ船でのクラスター発生 3)に続いたCOVID–19感染症の第1波を2020年5月末に乗り越えた。

多くの病院では,救急/外科/混合ICUをCOVID–19患者のための専門ケアユニットに変更していた。この変更により予定手術やICU入院が制限されることになった。さらにこれらの制限は重症患者の受け入れ数が3人以下の病院や,ICUの一部をCOVID–19病床に使用している病院でも発生した。重症COVID–19患者は専用スタッフやユニット内のゾーニングによって,より多くの医療スタッフを必要としたためと思われる。興味深いことに,専用のCOVID–19 ICUを備えた医療機関の15%は重症COVID–19患者の割合が高かった(32%)。またこれらの病院では,予定手術の制限や救急患者の受け入れ制限に差はなかったが,COVID–19患者以外の集中治療患者のICUへの入院制限は少なかった。リハビリテーションの導入や進行の困難さ,隔離基準の不明確さ,ICU治療後の一般病棟への移動が容易でないことが主たるICUからの退室を阻む結果となった。これらの理由に加え,COVID–19感染は長期化する 4)ことが原因となって,多くの医療機関でのICUのベッド占有率が高くなったものと考えられる。しかしながら,本調査から半数以上の医療機関が,本邦がCOVID–19の感染拡大をコントロールしている時期,不要不急の救急要請の減少により医療機関への過負荷が避けられたと回答した。これにより医療崩壊に至らなかったものとも推察される。

本研究では,合計4,938人のCOVID–19入院患者が確認された。その結果,入院時の重症度が中等症までのCOVID–19入院患者では8.4%が重症化または死亡していることが判明した。また重症COVID–19入院患者の12.5%が死亡していた。今回の調査では,人工呼吸,ECMO,ICU 入院を必要とした重症患者は 1,100 例(22%)であり,同様の研究で明らかにされたニューヨーク市地域での入院患者5,700例の14.2% 5)より高く,カリフォルニア州での入院患者377例中30% 6)よりも低かった。退院または死亡した患者のうち,本研究における,調査時に入院中の患者を除いた患者数に対するCOVID–19の死亡率は全入院患者の4.5%,ICU患者の14%であったが,本研究では患者情報の詳細が得られていないためこの結果は限定的であると考えられる。

大半の医療機関では,他国と同様に 7)医療資材の不足に悩まされていた。基幹病院の半数以上で,N95マスクは2日以上に1回しか交換できなかった。また,特定感染症指定医療機関では,厚生労働大臣や都道府県知事の指定を受けて,平時には感染症用の医療資材が優先的に供給されているにもかかわらず,N95マスクやその他の医療資材の不足が生じた。米国のICU医師を対象とした調査においても,医療従事者用のPPEマスクの不足が最も深刻な問題であったことが報告されている 7)。本調査から,大半の病院では,医療用品やPPEの確保に熱心に取り組んだことが報告されており,本邦でも同様の深刻な状況であったものと考えられる。さらに一部施設では確保した医療資材の品質に不安が感じられるようになった,との報告もあり,量的な不足に加え,質の保証の担保も重要な課題であるものと考えられる。ビデオ喉頭鏡はエアロゾル感染のリスクを軽減できる 8)ということで,COVID–19流行後,救急患者に使用するためのビデオ喉頭鏡用の電池が不足した病院もあった。

本邦の救急医はER医および救命救急医としてだけでなく,救急重症患者の急性期においてのacute care surgeonや集中治療医としても労務に当たる。また,メディカルコントロール体制の指導にも携わっている。このように本邦の救急医はより広い範囲を専門家として担当している。今回の調査では,COVID–19の第1波における救急医のアドバンテージとして,緊急性の判断に精通していること,感染症が疑われる患者の管理,危機対応,他科との連携,院内外の医療調整,社会貢献の精神などが100以上の病院から報告された。救急医の多くは,アドバイザーやボランティアコーディネーターとして地域の行政機関を支援していた。調査機関が短かったため,回答率は40%以下であった。しかし,本調査では秋田,愛媛,新潟,富山を除く43都道府県から広く回答を得られ,医療機関の各類型から十分数の回答が得られており,全国の状況が反映されていると考えられる。

今回の全国調査では,退院・死亡した患者のうち,COVID–19の死亡率は全入院患者の4.1%,重症患者では12.5%であった。医療スタッフはPPE不足に悩まされた。予定手術やICU入室,非COVID–19救急患者の受け入れ制限がCOVID–19患者の受け入れ数にかかわらず発生した。しかし,専用のCOVID–19 ICUを備えた病院は重症のCOVID–19患者をより多く受け入れICU入室制限が少ないという本研究のデータは,隔離解除や一般病棟移動基準の明確化とともに次のパンデミックの戦略として役立つ可能性がある。

謝  辞

本調査にご協力いただいた現場スタッフの皆様[補足表1(Appendix S1)],日本救急医学会理事をはじめとする貴重なご助言をいただいた皆様に感謝いたします。

本論文に関して,利益相反はない。

Supporting information

補足表1

Footnotes

本論文にはオンライン補足情報がある。

補足表1(Appendix S1):Hospitals that participated in this survey.

References

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Associated Data

This section collects any data citations, data availability statements, or supplementary materials included in this article.

Supplementary Materials

補足表1


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